こんにちは、マンション管理士・税理士の深谷高史(ふかやたかし)です。
前回のブログ「【速報】機械式駐車設備の指針が一部見直されました」では、
・国土交通省による指針の見直しとその背景
・操作ミスによる重大事故
について解説しました。
今回のブログでは
・管理組合、理事長、監事の責任
・機械式駐車設備のコスト負担
・利用者が少ない場合の解決方法
について解説します。
管理組合・理事長・監事の責任
(1)管理組合の責任
機械式駐車設備はマンションの共用部分であり、区分所有者全員で所有されています。
したがって、区分所有者全員で管理する権利と義務があるため、管理組合という団体で管理を行います。
その管理の不備により他人の生命・身体・財産に損害を与えてしまえば、管理組合が賠償責任を負います。
例えば外壁の剥落により歩行者に怪我を負わせてしまった場合に管理組合が賠償責任を負うことになりますが、機械式駐車設備での事故も同様です。
(2)理事長の責任
理事長は管理組合の代表者として管理組合の業務を統括し、さまざまな業務を遂行します。
また理事長やその他の理事も、その業務を行う際には善良なる管理者の注意義務を負っています。
例えば業務を怠っていたり、自分だけの利益を優先した場合には、管理組合に対して賠償責任を負うことになります。
機械式駐車設備の保守・点検が適切に行われていないことを原因に事故が発生した場合には、理事長に民事上と刑事上の責任が問われます。
(3)監事の責任
監事は管理組合の「業務の執行」と「財産の状況」を監査します。
つまり監事の監査は「業務監査」と「会計監査」の2つがあります。
監事の業務といえば、通常総会に提出する決算書の監査がまず思いつきますが、理事の業務が適切・適法に行われているかどうかもチェックしなければなりません。
機械式駐車設備の場合、保守点検報告書の内容を確認したりします。
機械式駐車設備の維持管理の業務監査を怠り、不幸にも事故が発生した場合には、監事にも民事上と刑事上の責任が問われます。
以上のように機械式駐車設備の維持管理も事故発生時の対応も、責任を負っているのは管理組合とその役員です。
万が一事故が発生した場合の損害賠償に備えて「施設賠償責任保険」に加入することをおすすめします。
しかし事故の発生により損害賠償だけでなく、マンション内の人間関係にも悪影響を及ぼします。充分に注意しましょう。
管理組合の財政への負担
機械式駐車設備は平面の駐車場よりも費用が多くかかります。
最近、国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が改訂されました(2021年9月改訂)。
ガイドラインでは修繕積立金の目安が示されていますが、機械式駐車場がある場合はより多額の修繕工事費が見込まれています。将来、補修や取替を行うためには修繕積立金を適切に設定しましょう。
補修・取替の工事費用が管理組合の財政に大きな負担となっている場合は、解体して駐車場を平面化するのも一つの方法です。のちほど詳しく説明します。
そのほか下記の点についても注意しましょう。
・区分所有者全員に公平な駐車場使用料の設定
・「管理費会計」「修繕積立金会計」とは別に「駐車場会計」の区分経理(必要であれば)
駐車設備が余っている場合
最近は「クルマ離れ」が進んでおり、地域によっては「駐車場余り」が生じています。
その場合、「外部貸し」「平面化」という解決策を検討してみるのはいかがでしょうか?
(1)外部貸し
マンション周辺で駐車場の利用を希望する人や会社がある場合、そういった方に貸し出すことによって外部から収入を得ることができます。
また、カーシェアサービスを招致すれば管理組合が外部収入を受け取る一方、マイカーを持たないマンション居住者の利便性も向上します。
ただし、不動産業や駐車場業といった収益事業を行う場合、法人税を納める義務が発生します。
詳しくは当事務所(またはお知り合いの税理士)にご相談ください。
(2)平面化
駐車場を外部貸ししても維持管理の手間は残りますし、納税の義務も発生します。
収入とコストを比較検討して、機械式駐車設備を取りやめるのも解決策の一つです。
つまり解体して、平面の駐車場へ変更します。
アスファルト舗装や砕石敷きを行えば、機械式に比べて維持管理の支出を大幅に節約することができます。
専門委員会を設置してマンション周辺の月極駐車場の状況など総合的に判断し、合意形成を進めてまいりましょう。
詳しくは当事務所(またはお知り合いのマンション管理士)にご相談ください。
(3)まず検討すべきことは?
機械式駐車設備でお悩みの場合、まずは下記の項目に着手することをおすすめします。
・駐車場会計の独立採算
・長期修繕計画の作成
・周辺の月極駐車場の調査
・税金の試算
・解体、平面化工事の見積り依頼
さいごに
建物・設備の維持管理には手間も費用もかかることは管理組合の役員経験者なら充分ご存じでしょう。
補修も取替も撤去も新設も、自分だけの所有物とは異なり多数決で決めていきます。
マンション内での検討が行き詰ったときは、ぜひ外部の専門家に相談してください。
当事務所のお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ!
最後までお読みいただき、いつもありがとうございます m(__)m
2021.10.30記